「戦略」という言葉から受ける印象は、「戦争」に結びつくものが多いでしょう。
これまでの歴史の中で、人間にとって有益な発明や発見が軍事利用されてきた側面があることは否めません。
そして日本も戦争を繰り返し、家族を失ったり、苦しい経験をされた方々が現在もいらっしゃるのです。
そのため「戦争から何かを学ぶ」という発想自体が、禁忌的なものであると拒絶される心境も想像に難くありません。
しかし視点を少しずらしてみると、日本人の多くの方々はNHKの大河ドラマ好きでもあります。
大河ドラマで採り上げられる題材の多くは、古今の戦やその狭間で活躍する人物にスポットを当てたものです。
私たちにとって歴史とは、その時代を実際に知る世代の人たちがいなくなると、「過去のお話」的な受け止められ方をするものなのかもしれません。
若者に限らず、戦国を題材にしたゲームの人気も衰えませんよね。
この記事では「ランチェスター戦略」を題材にしたビジネス書『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』を読んで学んだポイントをご紹介します。
ランチェスター戦略は、現在ではビジネスに応用されている思考・経営戦略です。
使用される用語には、「戦略」や「戦術」といった軍事的なものもありますが、ビジネス上のことであるとご理解いただければと思います。
私が手にしている福永雅文氏の著書『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』は、日本実業出版社のご厚意でご献本いただいたものです。
すばらしい本との出会いと機会をいただきましたことを、心から感謝申し上げます。
ランチェスター戦略の起源とビジネスに応用されるまで
ランチェスター戦略の起源は第1次世界大戦にまで遡ります。
イギリスのエンジニア「F・W・ランチェスター(1868~1946)」が、戦争における戦闘の勝敗には法則があると提唱したことからはじまりました。
さらに第2次世界大戦時に、アメリカ軍の作戦研究班によって「クープマンモデル」という戦争全体の勝敗の法則に発展しました。
その後は産業界で応用され普及していったのです。
日本においては田岡信夫(1927~1984)氏が、「市場占有率(シェア)を判断基準としてビジネスを制する販売戦略の理論及び実践体系」として確立されました。
この記事でご紹介する福永雅文氏の著書『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』は、田岡氏が確立されたビジネス戦略としての「ランチェスター戦略」に基づいています。
ランチェスター戦略とは
上述の通り、ランチェスター戦略には「シェア(市場)」という概念が根底にあります。
また、タイトルにある「弱者」については企業規模で判断するものではないことも述べられています。
いわゆる大企業であっても、ある地域や商品に限ればナンバーワンではないかもしれないし、中小零細企業でも特殊技術などで市場を大きく占有していれば「強者」だからです。
すなわち、ランチェスター戦略では「局面ごとに弱者・強者が入れ替わる」可能性があることを教えています。
大企業でも新規事業に参画する際には「弱者」の戦い方をする必要があります。
「戦略の失敗を戦術で取り返すことはできない」といった主旨の言葉をご存知の方も多いかと思います。
『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』でもそのことに言及しています。
個人的な話で恐縮ですが、私は司馬遼太郎氏の作品や田中芳樹氏の「銀河英雄伝説」が大好きです。
特に「銀河英雄伝説」には、戦略や戦術の要素がふんだんに盛り込まれています。
そして「戦略の失敗を戦術で取り返すことはできない」という概念が盛り込まれています。
他の作品(小説・マンガ・アニメ・映画)では、傑出した一人の人物(多くはパイロット)の活躍で戦況が大きく影響されるような印象を受けますが、「銀河英雄伝説」はそうではなく艦隊戦が描かれています。
「銀河英雄伝説」では、敵対する両陣営にそれぞれ名将が存在します。
一方は、勝てるための条件を全て整えたうえで戦いに臨む天才、言い換えると「戦略」を整えたうえで戦える常勝の天才が登場します。
それに対してもう一方は、味方に足を引っ張られる状況で戦いに臨まなければならない不敗の知将が存在します。
前者は勝利のために、後者は負けない(味方の犠牲を最小限に抑える)ために戦っているのです。
戦略とは大雑把に表現すれば「ストーリー全体」であり、「戦術」とはストーリーの中の「エピソード」に例えられます。
「戦略の失敗を戦術で取り返すことはできない」。
きちんとしたストーリー(戦略)を持っていなければ、ある場面(局面)を一時的にしのいだとしても生き残ることは難しいのです。
話がそれてしまい、すみません。
ランチェスター戦略で弱者が生き残る方法とは?
「弱者」とは絶対的な位置付けではなく、相手との相対的な力関係で決まります。
『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』の中で教えられているエッセンスを一部ご紹介します。
勝ち負けは競合局面における敵と味方の「力」関係で決まります。出典:『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』福永雅文著 日本実業出版社 58ページ
「弱者」が生きのこるためには、狭い市場に的を絞り、その中で圧倒的なナンバーワンを目指すべきです。
そのためには他社との「差別化」が重要になります。
他社が面倒で手を出すことを躊躇するようなアフターサービスかもしれませんし、他には真似できない技術かもしれません。
ですから「弱者」は、自身(自社)の強みを知り、磨きをかける必要があります。
また、狭い市場に限定するわけですから、他の市場は一時的かもしれないにしてもあきらめる覚悟と決断が求められます。
そうまでして決定した狭い市場で、のほほんとした行動をしていては生き残ることはできないでしょう。
「弱者」は覚悟を持って「一点集中攻撃」を実行しなければなりません。
ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則をどのように活用するべきか?
『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』では、次のような法則が教えられています。
- ランチェスター戦略第一法則 ⇒ 局地戦の戦い方
- ランチェスター戦略第二法則 ⇒ 広域戦の戦い方
他にもビジネスで活かせる概念や、さらには、営業活動を想定した具体的な立案と実践の方法も述べられています。
私はインターネットを使ったブログやサイト運営により、「アフィリエイト」「Googleアドセンス」などの報酬を得る道を選んでいます。
組織で取り組んでいるわけではないですし、アフィリエイトのプロやベテランには程遠い存在の「弱者」です。
私の場合、ランチェスター戦略の第一法則が非常に参考になりました。
ブログやサイトは世界に向けて公開されているため範囲は広大ですが、全てのネットユーザーが私のサイトやブログに興味を持ち、訪問してくれるわけではありません。
ネット上で範囲を限定するための重要な概念として「キーワード」というものがあります。
企業がサイト運営する場合などでは、単語1語の「ビッグキーワード」を狙うこともできるでしょう。
しかし私の場合には、そのような手法を選択しても勝ち目はありません。
Googleの検索順位で上位に入ることは困難なため、ブログやサイトは人目に触れることもなく日陰に追いやられてしまうことでしょう。
そこで、戦う場面(キーワード)を絞り込み、記事の内容や記事のボリュームで他のサイトやブログとの差別化をしていく必要があります。
弱者は万人受けを狙う必要はありません。いや、狙ってはならないのです。出典:『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』福永雅文著 日本実業出版社 46ページ
これはあくまでも私のビジネスに当てはめた場合のことです。
『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』を読まれることで、あなたのビジネスでの活路を見いだすためのヒントが得られることでしょう。
まとめ
- 数多くのわかりやすい事例が紹介されているので理解しやすい
- 事例によって、どのようにランチェスター戦略を活用するべきかがイメージしやすい
- 弱者(規模・資源・人材など)が活路を見い出す方法が教えられている
読み手のビジネススタイルに当てはめることで、袋小路の行き詰まりから脱出できる可能性を見出せる1冊だと思います。
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