規模の小さな事業者(企業)は、大資本を背景に大きくビジネス展開をしている企業には勝つことができないのでしょうか?
近代日本のビジネスにおける歴史をみると、大型のスーパーマーケットやショッピングモールの出現によって、閉店に追い込まれた個人商店は数多く存在していることがわかります。
こういった現象は遠い過去の話ではなく、私たちが生きている間に起こったことです。
これから起業を志す人やお店の後継者の将来に不安しかないとしたら、日本の経済はより縮小してしまうことでしょう。
この記事では「ランチェスター戦略とは」にフォーカスして、「新版ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則」を読み解いてみようと思います。
ランチェスター戦略とは?
ランチェスター戦略とは、企業間の販売競争における勝ち方の原則、理論と実践の体系です。
『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』福永雅文著(日本実業出版社)43ページ
別の表現をすると、ランチェスター戦略とは「ビジネスにおける弱者であっても強者に勝ち、生き残るための実践的な戦略」となります。
まずはランチェスター戦略独特の言葉の定義をご紹介します。
ランチェスター戦略での「弱者」「強者」とは
ランチェスター戦略における「弱者」とは、必ずしも中小零細企業や個人商店を意味するものではありません。
あくまでも、ライバルに設定した会社との相対的な関係に基づいて判断されます。
例えば、会社の存在する地域、取り扱う商品などの条件を限定して考えた場合、いわゆる大企業でも「○○地域では売り上げが2位である」とか「□□商品では他社に勝てない」というケースも存在するはずです。
その場合、大企業でも一定の条件のもとでは「弱者」になるのです。
その逆に地域や特定の商品に限定すると、大企業にも負けない強味を持った中小零細企業や個人商店が存在します。
「○○地域に限ればわが社のメロンパンはどこにも負けない!」といった感じです。
繰り返しになりますが、ランチェスター戦略における「弱者」と「強者」は、ある条件における相対的な関係できまります。
ランチェスター戦略での「戦略」「戦術」とは
ランチェスター戦略における「戦略」とは、目標を達成するためのシナリオと、それに基づいて資源を最適に配分することを意味します。
ランチェスター戦略における「戦術」とは、上記の戦略シナリオを実行するための具体的な方法及び手段です。
そのため「戦術」と「戦略」の関係性は、戦略の下位概念として戦術が存在することになります。
戦略は意思決定の領域でもあります。
しかし、戦術という具体的な実行がなくては、ただの夢または理想にすぎません。
福永雅文氏は『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』の中で、「戦術」と「戦略」について次のように述べています。
戦略の失敗は戦術では取り返せない…
『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』福永雅文著(日本実業出版社)54ページ
例えば、業務遂行能力の高い天才的な営業マンが存在していても、会社や部門の戦略がダメならば組織としての勝利は難しいということです。
例えチームではなく個人で働く場合でも、「戦略」は用意するべきです。
ランチェスター戦略の原則や法則
ここからはランチェスター戦略に用いられている「原理」や「法則」に視点を変えていきます。
ますは、ランチェスター戦略におけるビジネスの「原理」をみてみましょう。
競合局面における敵と味方の力関係で勝敗が決まる
『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』福永雅文著(日本実業出版社)34ページ
「競合局面」とは、全体の力関係のことではありません。
例えば、全体として100のチカラを持つライバル企業が存在しているとします。
そのライバル企業は、10のチカラでA地区のシェアを維持しています。
あなたの会社は30のチカラを持っています。
A地区にあなたの会社が20のチカラを投入すれば、あなたの会社がA地区のシェアを奪えるということになります。
全体的な力関係では3倍以上の差のあるライバル企業でも、局所的にみればあなたの会社が上回れる可能性があるのです。
弱者がチカラを分散していては、大きな企業相手に生き残ることは困難です。
チカラを1ヶ所に集中する必要があるのです。
上述のように、トータルでは勝ち目のない相手との戦いでも、チカラが分断されている状況でなら勝機があります。
このような戦い方を「各個撃破」といいます。
ランチェスター戦略におけるビジネスの「原理」「法則」
「弱者は全体的にみた場合に少数でも、ライバルよりもチカラが多くなる局面(多数になる状況)を作って戦うこと。」
ランチェスター戦略には「局所優勢主義」という考え方があります。
これがまさに、弱者が強者を逆転できる法則でもあるのです。
ランチェスター戦略を用いた弱者の勝ち方
ランチェスター戦略における弱者のとるべき基本戦略は「差別化」です。
差別化の例としては、次のようなことが考えられます。
- 商品の差別化
- 販売方法の差別化
- アフターサービス等の差別化
etc...
ランチェスター戦略流に表現すると、「弱者は万人受けを目指してはいけない!」ということになります。
万人受けを目指したら、大企業に太刀打ちできないことでしょう。
それよりも、一部の根強いファンを獲得することで弱者でも生き残ることができます。
いわゆる「リピーター」の獲得です。
この概念は本当に重要だと思います。
個人的な話で恐縮ですが、私はアフィリエイトをビジネスと考えて取り組んでいます。
そのため、サイトやブログを運営する際にどのような人に訪れて欲しいのかを考えます。
全ての人に受け入れてもらえるのはうれしいことですが、現実はそうはなりません。
全ての人向けに書いたメッセージを発信しようとすると、結局は誰の印象にも残らないモノができてしまいます。
それならば、全体に占める割合は少なくても、一部の人に向けたメッセージを発信する方が結果につながるのです。
弱者は全体ではなく、一部で圧倒的に勝つことを目指すべきです。
ランチェスター第一法則・第二法則
ランチェスター戦略には、その核となる法則が2つ存在します。
1つは局地戦を想定した法則で、もう1つは広域戦を想定したものです。
ランチェスター戦略は、第1次・第2次世界大戦で研究された理論をビジネスに応用しているため、戦争にまつわる表現が多く存在します。
武器や兵力数などがその例です。
これらを自身のビジネスに置き換えて考える必要があります。
ランチェスター第一法則(局地戦の戦い方)
局地戦または1対1の勝負では、次の公式が適用されます。
戦闘力 = 武器性能 × 兵力数
『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』福永雅文著(日本実業出版社)59ページ
これは、武器の性能や技能が同じであれば、より多くの兵力を投入した方が勝利するということです。
その逆に、同じ規模の兵力数であれば、武器や技能に優れた方が勝利します。
『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』では、織田信長と豊臣秀吉の戦い方が紹介されています。
歴史が好きな方なら、すぐに納得されるのではないかと思います。
ランチェスター第二法則(広域戦の戦い方)
広域戦(集団での戦い)には、ランチェスター第二法則が適用されます。
戦闘力 = 武器性能 × 兵力数の2乗
『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』福永雅文著(日本実業出版社)68ページ
ランチェスター第一法則の武器の想定が「刀や槍」であるとすれば、こちらは「機関銃」を用いた戦いです。
このような戦いでは、兵力数において劣勢の場合、武器の性能を少し上げた程度では太刀打ちできないことになります。
兵力数が相乗効果を発揮するため、兵力数の多い方が勝利するのです。
まとめ
- ランチェスター戦略では「戦略」を基に「戦術」を展開する必要がある。
- 弱者にあったビジネス戦略がある。
- ランチェスター戦略には「第一法則(局地戦)」と「第二法則(広域戦)」の2つの法則がある。
この記事では、ランチェスター戦略のエッセンスの一部のみしかご紹介することができませんでした。
『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』には、多くの事例(歴史・ビジネス)が盛り込まれており、法則の根拠も説明されています。
ご興味のある方は、『新版 ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』をお読みいただければと思います。
![]() |
【新版】ランチェスター戦略 「弱者逆転」の法則 [ 福永雅文 ] 価格:1,650円 |