書籍書評(ブックレビュー)

年齢差を乗り越えるコミュニケーションのマインドとスキル!部下のトリセツ 浅野泰生著【書評】

部下のトリセツ

自分の当たり前が部下にとっては当たり前ではない!

職場における世代ギャップはコミュニケーションを阻害するだけでなく、会社の不利益にもつながりかねません。

そんな悩みには、浅野泰生氏の著書「部下のトリセツ」がおすすめです!
上司が持つべきマインドと行動に移せるアドバイスが盛りだくさんです。

この記事では、私が「部下のトリセツ」を通じて学んだエッセンスを3つに絞ってご紹介します。

この記事を書くために参考にさせていただいた浅野泰生氏の著書『部下のトリセツ』は、株式会社think shift様のご厚意によりご献本いただいたものです。

すばらしい本との出会いと機会をいただきましたことを、心から感謝申し上げます。

部下のトリセツ、心に響いたエッセンス 3選

部下のトリセツ

ここからは、部下と接する上で非常に役立つマインド(心得)とスキルを、3つに絞ってご紹介します。

今でこそ、自宅で仕事をしている私ですが、サラリーマン時代に身につけていたら、どんなにか良かったことだろうと思うものを厳選しました。

①上司としてのマインド(心得)

私が部下のトリセツを読んで、一番心に刺さったのは次の1文です。

リーダーという役職はあくまで ” 役割 ” であって、人として ” 偉い ” わけではありません。

出典:『部下のトリセツ』浅野泰生著 総合法令出版社 174ページ

部下のトリセツという、ハウツー本的な印象を受けるタイトルとは裏腹に、著者の浅野泰生氏は非常にすばらしい価値観を持たれていることが伝わってきました。

リーダー(上司)であるということは「あくまでも職場という限られた囲いの中での役職にすぎない」ということを自覚できるか否かは、結果的にその人物の人格に大きな影響を与えます。

このような考え方を持っていない場合、退職やリストラなどで会社を辞めた途端に、大きな寂しさを伴うギャップを感じてしまうかもしれません。

イヤな思いをさせられた経験のある部下にとっては、そのような上司がいなくなるのは喜び以外の何物でもないはずですから、道端で会っても社交辞令のお辞儀が関の山。

人は自身の価値観に基づいて、話をし、行動するわけですから、自分が無条件に偉いと勘違いしていては慕われる要素も少ないことでしょう。

数十年かけて身に付けた人格が、「勘違いの権力とその行使だけ」だとしたら寂しいですよね。
それでも、気付けた方が幸せなのかもしれませんが…。

そんな人生を歩まないためにも、リーダー(上司)になったなら肝に銘じておくべきことだと思います。

②意思決定

意思決定は様々な場面で行なわれますが、ここでは社内の会議についてフォーカスします。

まずはリーダーではなく、部下(会議の参加者)の視点で見てみましょう。

部下のトリセツには、職場の会議における悪い例が書かれています。

たとえ活発な意見が多数述べられたとしても、どれだけ時間をかけたとしても、決定したことが実行に移されない会議はムダだというものです。

全くその通りだと思います。
ときどき、目指している結果は同じでも、そこに到達する方法(手段)に固執するあまり一致できないことってありますよね。
自分の意見(この場合、方法)が絶対的に正しいという考えが、団結を妨げる壁になってしまうのです。

会議をムダにしないために、次のような提案がされています。

  1. 意思決定者を決める
  2. 参加者が意見を出し合う
  3. 意思決定者が決断する
  4. 参加者が決定された内容を最善のものにするべく行動する

④が非常に重要だと思います。
私は反対だったのよ!」「どうせ失敗しても俺の意見じゃないから…」といった態度では、会社やチームにとって不利益にしかなりません。

改善案は、決定事項に対して誠実に取り組んでから伝えればよいのです。

次にリーダーに視点を移してみます。

部下のトリセツには、「リーダーの持つ権利」と「権利が与えられている理由」が明確に述べられています。

もちろん、最終的な決断は基本的にリーダーがするべきです。部門のリーダーなら部門長、案件のリーダーならプロジェクトリーダーが決めます。
決定したことに対して責任を取れるのは、リーダーしかいません。そのため、多数決ではなく、リーダー自身が判断して決定する必要があります。「責任をとる」=「決める権利を持っている」ということなのです。
リーダーは自分で決めたことを誰かのせいにしてはいけません。それでは、リーダーとしての役割を果たしていることにならないからです。

出典:『部下のトリセツ』浅野泰生著 総合法令出版社 105~106ページ

これがリーダーに求められる資質なんですね。

このようなリーダーのもとに、まずは決定事項をしっかりと実行し、問題点があれば報告してくれる部下が揃えば、チーム内にシナジー(相乗効果)が生まれて大きな成果につながっていくことでしょう。

法人で活動する多くの人は、場合によってはリーダーであり、より大きな枠組みのもとでは部下でもあるのが一般的だと思います。
それぞれの場面や立場によって自身の役割を明確にしておくことで、求められている人材になれるのではないでしょうか。

②「当たり前」に対する認識の違い

もう数年前のことになります。
私は3人一組で仕事を行なうことがありました。

3人の年齢の内訳は、10歳以上年の離れた年下の相棒と最年長のリーダー、その中間が私といった構成でした。
おもしろかったのは、ここにジェネレーションギャップが生じたことです。

クルマで移動する仕事だったので、天候による作業への影響は少なからず考慮しなければなりませんでした。
まして雪に弱い東京です。
雪が降った朝は通常よりも早めに出勤して備えるというのが、リーダーと私の「当たり前」でした。
ところが、若い相棒はそんなことは関係なくいつもと同じ時間に出勤してくるのです。

リーダーと私は、「雪が降ったらチェーンを巻いたり、雪かきしたりとやることがあるから、早めに出勤するのが当たり前じゃない?」と伝えましたが、相棒は納得しなかったのでしょう。

別の雪の日も変化はみられませんでした。
自分たちの当たり前は若い相棒にとっては当たり前ではなかった」ということです。

この場合、上司と部下の関係ではありませんが、私には相棒として改善すべきことがありました。
もっと相棒の考えに耳を傾けるべきだったのです。
今となっては懐かしい思い出ですが、そんな日常の些細なことの中にも学ぶべきことはあったわけです。

浅野泰生いわく、

(一部省略)” 当たり前 ” は人によって違います。会社やチームなど、所属するコミュニティによっても変わります。会社やリーダーがどんなことを当たり前として求めているのか、日頃から伝えておくことが大切です。

出典:『部下のトリセツ』浅野泰生著 総合法令出版社 158ページ

ということです。

そのためには自分の価値観を押し付けずに耳を傾ける姿勢が必要です。
どうせ、言ったって聞いてくれないじゃないか!」と思われているようなら、相手も話す気にはならないでしょうから。

部下のトリセツからピックアップした3つのエッセンスをあらためて見返すと、具体的な行動につながるアドバイスよりも心構え的な要素ばかりが並んでいる気がします。

3選」ではなく「5選」にすれば、ハウツー的な要素も入ってくるのですが、そこは部下のトリセツを手に取ってご確認くださいね。

部下のトリセツを職場以外のコミュケーションでも活かす!

部下のトリセツ・コミュニケーション

部下のトリセツの中で、浅野泰生氏はご自身の経験した失敗についても触れています。
上司になった際の思い違いや試行錯誤も正直に書かれています。

だからこそ共感できるのであり、自分にも当てはめやすいのだと思います。

最後に、次の文章を引用します。

ここまで紹介してきたものは、学問でもなく伝聞でもなく、失敗と改善の繰り返しから導かれた私自身の実録です。最初からうまくいったわけでもなければ、これがベストだとも思っていません。

また、人間関係は ” 繊細 ” です。一度良い関係が築けたからといってそのまま放置してしまうと、悪化することはあっても良化することはありません。常に良い関係が続くよう、日々やり取りを重ねて、改善していく必要があるのです。

出典:『部下のトリセツ』浅野泰生著 総合法令出版社 254ページ

私が部下のトリセツを読みながら感じていたのは、会社などの職場の人間関係というよりも親子関係を良好にするために役立つということでした。

親子間の年齢は、通常20歳以上は離れているはずです。
職場でいう、ベテラン上司と若手部下の年齢差に近いものがあります。

当然、それぞれの「当たり前」や「常識」にも違いがあるのです。

家族として一致するには、それぞれのメンバーが自覚するべき事柄があります。
親も立場代われば子ですし、子もいずれは親になる可能性があります。

まずは親として、家族関係をより強固にできるように、学んだエッセンスを活用したいと思います。

部下のトリセツは職場に限らず、コミュニケーション力を高めるためのエッセンスが凝縮された1冊です。

部下の教育に悩んでいらっしゃるお父さんにとって部下のトリセツは、部下との良好な関係構築や改善に役立つ情報が満載です。
さらには、家族関係をより良好にするためにも役立てられますよ。

そのような視点で読むと、さらに価値が高まるのではないでしょうか?

まとめ

部下のトリセツ
  1. 上司は部下を知ることから始める必要性がある。
  2. 上司自身の改善も必要。
  3. さまざまなタイプの部下とその対応が記されている。
  4. 著者の失敗も含めた経験は、読み手にとっても貴重な教訓になる。

部下のトリセツ [ 浅野 泰生 ]

価格:1,540円
(2020/3/23 13:26時点)